「日本航空事故処理担当」 山本善明著
先日感想を書いた「墜落現場」の本を購入した同じ時期に、目に付いた同じような関連の本として買ったのが、この本。amazonの紹介で内容などについてはこちらをご参考に。大まかにいうと、題名の通りに日本航空の事故処理の長年のスペシャリストで統括的立場もされた方が退職後に書かれた本である。
実は、中身を良く見ないで買っていたので、てっきり日本航空の御巣鷹山墜落事故のことも書いてあるかと思っていた。だけど、すぽっとその件だけは担当されていないので抜けております。日航も御巣鷹の事故は史上最大の墜落事故だったので特別体制をとられたようで、逆に言えばそれ以外の主だった事故は全て著者が陣頭指揮をとられたようです。
おもな事故は、「逆噴射」という言葉で有名になった羽田沖の墜落事故(機長が6年間近く心身症で精神的に追い詰められているのを見逃していた事故。精神的に誰が見ても疲れている状態なのに、なんで医師がスルーさせて勤務を許可してしまうのか?)と、ハイジャックした機の機長を空中で刺し殺して自分でジャンボ機を操縦した事故がメインです。もちろん、他にも幾つも書いてあります。それらの事故処理の流れを見ると、なんか人災なんじゃないかな?もっと事故を会社が重く見て対処すべきじゃないかなという根底部分が感じられる。著者は目一杯提言したり努力していても、会社の安全軽視という姿勢、ひいては航空行政という国自体の安全へのリスク管理の甘さみたいなのが垣間見られる。
そもそも、今のご時勢でこの本を出版したこと自体がかなりの驚き。はっきり言うならば内部告白の本である。この本が出版されて7年ぐらい経つ。日航は出版当時は著者を訴えようかという話もあったとか?ぎりぎりの判断で訴訟はやめたという。それぐらいに耳の痛い話が多く載っている。どこの会社も営業重視、事故処理は軽視あるいは、出世コースの本流からは離れた・・・というのは大変似ている構図である。メーカーならば営業が花形、サービス、アフターケア部門が日陰みたいな・・・・・
そういうサラリーマンの縮図構造みたいな本でもあるので、身につまされる気分である。また、最近良く発生している日航のトラブル続出なども、やはり会社体質、労組み会社の中で5個も6個も一杯あって、外から見るといかにも風通しの悪そうな会社であることは痛感される。ただ、一生懸命人として職務に向かって事故処理こつこつと進め、会社にも提言をする著者の姿は訴える力がある。外国ならばゼネラリスト=特に専門性がなくて使えない人、スペシャリスト=仕事が出来る人・・・・という構図があるそうだ。日本人はスペシャリスト軽視で著者も歯がゆく思っている部分でもあったりして、なかなか考えされられるものである。
★この本は、6月29日の日曜日に「墜落現場」の本の次に読んだのだけど、さらに、仕事に関連する本も一気に読んでしまって、一日に3冊も一気読み。私は読書する時は一気に読んでしまって、読まないときは何ヶ月も読まない。非常に読書に波があるのです。元々は読書好きなんで、読み出すと止まらない。いつまで続くのか、この波は?
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