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2004/11/28

「残された山靴」佐瀬稔遺稿集

しばらく山の本を読んでいなかったので、図書館にあった中でよさそうなのを借りてきた。佐瀬稔氏の本は実は初めて。たまに雑誌「山と渓谷」で記事を読んだことがあるぐらいだった。人物像を描くのを得意としていることは知っていた。

この本には、森田勝、加藤保男、植村直己、鈴木紀夫、長谷川恒男、灘波康子、山崎彰人、小西政継の8人についてのコンパクトにまとまった評伝のような形になっている。佐瀬氏は、既にそれぞれの人物像について一冊の本にまとめて出版されているものも多く、やはり有名な作品になっているものは今後そちらを読んでみたいので、今回は入門編を拝見したという気分だった。自分としては、今回初めて取り上げたそれほど有名登山家でない人の方が、他で読めないだけに面白かったような気がする。

なかでも、興味を魅かれたのは灘波康子さんのものだった。日本人女性で田部井淳子さんに続いて、20数年ぶりに第2登を果たしたのち、下山途中で凍死。世界7大陸最高峰踏破も兼ねていたエベレスト下山中の事故なだけに、どういう登り方をされていた方だったのかがとても興味を持っていた。ジョン・クラカワー著の「空へ」はなかなかの作品だと思っているが、そこにも彼女の姿は少ししか描かれていなかったので、本当のところが知りたかった。

早稲田大学の山のサークル(登攀をしない縦走系のサークルのようで、大学は違うけど自分と同じようで親近感がとても持てた)から、次第に山にのめりこんで行く様子が描かれていた。一番凄いなと思うのは、フェデラルエクスプレス社の外資系キャリアウーマンとして、きちんとした社会人生活を送りながら、相当な資金を全て自分で稼いで楽しんでいたことだ。既にヒマラヤなどもスポンサーをあてにするような時代ではないので、こういうガイド登山的な公募隊での登り方という意味では、これからの多くの人が遠征を行う意味での参考になるだろう。エキスパートでなくても、普通に山が好きな人でも登れることって、実は素晴らしいことだと思う。

それと、長谷川恒男亡き後のウルタルの悲劇についても、 初めて読むだけに、「呪われた山」という感じがしてならなかった。

最後に佐瀬稔氏のガン闘病記が載せられていて、これが実は一番インパクトが強いかもしれない。亡くなられた時に、ニュースで流れたのがまだ記憶されているのだが、他の作品を是非読んでみたいと思わせる人の最期だった。

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コメント

MINMINさん、こんばんわ。
ジョン・クラカワーの「空へ」は読んでいませんが、「空へ」を原作とした映画(邦題「エベレスト死の彷徨」・・・・・「八甲田山死の彷徨」みたいですね。)をビデオで見たことあります。
灘波康子さんのことは、そのビデオでもあまりちゃんと描かれてはおらず、まるで登山初心者のような描かれ方でした。
少なくともエベレストに登頂する実力の持ち主とは思えない描写の仕方で、欧米人の東洋人を見る目というものを妙に感じてしまうビデオでした。

投稿: Poohとうさん | 2004/11/28 21:22

「エベレスト死の彷徨」の映画を見損なっているので、是非ビデオで見たいなあ。。。「空へ」の本でも灘波さんはあまり書かれておりません。

思うに、著者が言う「ちゃんとした経験ある登山者」というのは、いわゆる日本でいう「アルパインクライマー」のことを指すのです。岩壁および雪稜を登ることを得意としている人達のことです。著者はかなりのクライマーだそうで、そういう人から見ると、灘波さんは他の色々な情報を見てもご主人がクライミングをする人だから恐らく簡単な岩のレベルはこなしているけど、自分でトップに立ってバリバリ登るレベルではないような?感じです。ガイドの後ろでセカンドで登るようでは、本当の意味では自立したクライマーとは言えないからでしょう。

「空へ」の本では、そういうクライマーの観点から書いているので、日本人の一般登山者の感覚からみると、なんか冷たく描かれているように思います。また、彼女自身も「芯のしっかりした闘志を内に秘めたタイプ」のようなので、アメリカ流では受けが悪いのではと思います。アメリカ人の前では、「あくの強いぐらいの自己主張」がないと、駄目なんでしょうね・・・・

投稿: MINMIN | 2004/11/29 21:35

難波康子さんに関する記述は、私も「残された山靴」と「空へ」でしか読んだことがないのでわかりませんが、MINMINさんのおっしゃる通りなのでしょうね。
クラカワー氏は一応クライマーで、難波さんのことをド素人のように書いています。
その真偽のほどは知りませんが、少なくとも公募登山でエベレストを登ることと、クライミング技術はあまり関係ない気がします。

佐瀬さんの本は、RCCⅡ、長谷川恒男、森田勝、山田昇とみんな良かったです。
長尾三郎氏よりもうまいというのが私の印象です。
是非、この機会に堪能してください。

投稿: GAMO | 2004/11/30 00:28

GAMOさん、こんばんわ
クラカワー氏は、山屋=クライマーという思考で全てあの本を書かれているような感じでしたね。でも、公募登山でそもそもクライミング技術を持っていない人を登らせていいのか?というさらなる前段階の問題提議を行っているように思えました。

佐瀬さんの本は、図書館に本があれば(笑)の話ですが、森田勝さんのをできれば読みたいですね。「神々の山嶺」の本って、ベストセラーになったけど、どうしてもこの佐瀬さんの本を小説にしただけっていう気持ちがずっとあったので、是非確認してみたいところです。

投稿: MINMIN | 2004/11/30 21:56

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