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2005/01/08

グランマ・モーゼス展

20050107_1944_003グランマ・モーゼスは、1860年生まれのアメリカ人で、農家の生まれで、ずっと農業をやってきて、夫の死後70歳すぎから油絵に目覚め、101歳で亡くなるまでに約1600点を描き、アメリカを始めとして世界各国に知られる有名な画家です。素朴な農園風景を描いていて、名前を知らなくても、この絵は見たことがある・・・と思われる方もいるかと思います。

先日、たまたま新聞にこの方の記事が載っていて、70歳から何かを始めて素晴らしい業績を残した方であるということに興味を持ちました。記事には日本だと損保ジャパン美術館に何点か常設展示されているけど、この美術館は「ゴッホのひまわり」が最大のウリだけど、そのそばにある彼女の絵の方が、絵としてはゴッホよりも下手かもしれないけど、その何倍も「人に癒しを感じさせる」作品である・・・・・という紹介がなされていた。見たみたいなあと思っていたら、渋谷と新宿の2箇所で展示会が開催されることがわかったので、久々に美術展に行ってみることにした。

昨日は、渋谷・Bunkamuraで開催されている展示会に、仕事帰りの夕方に行ってまいりました。金曜日の夜ということで、開催時間が夜の9時までとゆっくりしているので、6時過ぎには到着。人もまばらで、静かな空間でゆったりと見学できました。

展示は、春、夏、秋、冬の順番に展示されておりました。また、絵を始める前には刺繍が趣味だったので、見事な絵の刺繍も5点ほど展示されておりました。油絵は60点ほど。ほのぼのとした作風で、ユーモラスであり、どの絵画も田舎の田園風景が一杯。アメリカの田舎の素朴な感じがどの作品にも描かれておりました。そこには、村人の姿も一杯載っていて、なんか、いいなあ~~。行ってみたいような楽しげな空間です。

ところが、半分ほど見終わったときに、途中のビデオルームでダイジェスト版みたいな生い立ちなどに触れた10分ほどのフィルムを拝見して、びっくり!! 彼女の描いた風景は、アメリカの田舎も第二次世界大戦後には荒廃してきてしまっていて、人々は農村から都市へと流失してしまっており、農地も荒れて、人々も居なくなってしまっており、その様子を悲しんだ彼女が、一生懸命記憶の中にある風景や人々の活気ある様子を再現しようとして絵を描き続けていたという。彼女の絵は、実在する風景というよりも、実は
    「心象風景だった」
ということなのでした。。。。。 

展示物には、古い雑誌の切抜きが近くに置かれていたので最初はよくその意味することがわからなかった私でしたが、その解説を受けて初めて理解したのでした。そういう昔の物を雑誌などから探して、モチーフとして、独自の構図で絵を描いたということでした。遠近感とか、綿密な話になると絵画に疎い私なので、こういう画法はどうなのかは自分にはわからないのですが、確かに彼女の「心の中の風景」と見るならば、こんいう描き方も納得です。

また、最初の頃の作品は、普通の描き方をしているものもあって、構図的には描写力はきちんとされているのですが、しだいに「グランマ・モーゼス様式」になってくると、だんだんと人数が多くなってくるようで(25人から35人ぐらい描かれている作品も多かったです)なんか、独自の楽しい世界に引き込まれる気がしました。細部も大変細かく仕上げていて、年をとっても絵に対しての情熱がとても感じられるものでした。

個人的には、冬の景色がとてもいいと思いました。本人も、冬の景色が好きだったようで、暗く厳しい冬の寒さの景色の中にも人々の暖かい交流の情景が素晴らしいと思いました。失われゆくものを遺しておきたい・・・・という作者の想いが伝わってくるようでした。

久々に目に保養となりました。

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