「二人のアキラ、美枝子の山」
井上靖著「氷壁」のモデルといわれる松濤明(「風雪のビバーク」の人)と、そのモデルと言われた女性の出会いの話と、そして松濤氏の死後に女性が山にのめりこんでいき、第二次RCC創設者の奥山章氏との結婚、そして奥山氏の死の病を苦にしての自殺による別れ。そして、いまも彼女は生きていて当時のことを静かに語り始めるという内容です。
登山というのは、思索的な部分があるせいか、山の名著とかも多い。山は登れればいい・・・・みたいな人には、全く向かない本だが、少しでも登山史的なことに興味ある人ならばとてもよい本だと思う。戦争前後から、登山ブームに沸いた熱い初登攀の時代の様子がとてもよくわかる。私は、4ヶ月前ぐらいにフリークライミングについての本で菊地敏之ガイドが書いた「我々はいかにして「石」にかじりついてきたのか」という本を読んだが(この日記の9月23日付けに感想を載せてます)、この本もとても面白い登山史の本であった。やや内輪話的な要素が強く、まだ現役の人も多く出てくる本である。今回の本はもちろんもっと前の話なので、生きている人も少なくなったので支障が少ない分、率直に書かれているようである。
読んでいて色々と思うところはあるが、美枝子さんという人は相当タフな女性で、松濤氏を待つために単身冬の上高地に出現。何日も現れないので、厳冬の1月にスキーを履いて西穂高超え(たぶん中尾峠を越すイメージか)をして、もしやと新穂高温泉にスキーで降りていく!!! 今でこそ、中の湯まで除雪されるようになったので比較的上高地も入山しやすくはなったけど、そうなったのはほんの数年前のことである。当時は相当下から中の湯までが1日がかり。それを彼女は19歳の若さで、いくら国体のスキー選手だからとはいえ、恐れ入るものである。随所に彼女の芯の強さみたいなものが表現されていて、読めば読むほどジーンとさせられる。
また、スキーが当時は登山の道具として本当に身近に使われていたのが実感できるし、当然にゲレンデもリフトなどはないぐらいの話の時代なんで、その話に乗鞍や焼岳を練習場にしていたりするので、とっても凄いと思った。なんか、昔の人って、純粋で熱くて現代人が忘れている何かを持っていたんだなって思う。
そして、何よりもやっぱり女性の方が生命力が強い。「強く生きろ」の奥山氏の遺言どおり、本当に美枝子さんはしっかり強く生きてきたことに深く感銘しました。
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コメント
新穂高温泉へスキーで滑り込むところは、私もどきどきして読みました。滑り込むというより、滑り落ちていくような記述だったので、その度胸には度肝を抜かれました。
若い頃からまっすぐ「強く」生きてこられたかたなのだなぁと思いましたよ。
投稿: JO | 2005/02/07 23:46
あそこの新穂高温泉への滑り込む描写、すごいですよね。全編を通してそういう「意気込み」が感じられますね。やっぱり、女は度胸?な~んてね。
他にも当時の冬山の様子や、クライミングの様子が伺えてとても興味深いものですね。
投稿: MINMIN | 2005/02/09 21:55
安川茂雄さんの「青い星」にも出てくる美枝子さんですね。
読んでみたい!!
でも、金欠病の私にはちょっと値段が・・・。
投稿: GAMO | 2005/02/10 00:50
GAMOさんのサイトで安川茂雄さんのことを調べたら、とっても興味を持ちました。是非読んでみたい作品ばかりなのですが、絶版のよう?
今まで知らなかったのが恥ずかしい・・・
図書館ならあるかしら?
投稿: MINMIN | 2005/02/10 23:48
うーん・・・・
ここ読んだら読みたくなって
買っちゃいました(笑)
投稿: えび | 2005/02/22 23:44
一杯感想があったけど、簡単に書ける象徴的なスキーシーンを中心にまとめました。是非、えびさんの感想も読まれたら教えてほしいな。
投稿: MINMIN | 2005/02/22 23:55