遠軽シール
「遠軽」と言って、すぐにわかる人は結構な北海道通? 「えんがる」と読むのだが、オホーツク海よりも少し内陸に入ったあたりで、サロベツ湖の近くと言えばよいだろうか。電車だと旭川から網走に向かっていく途中の駅である。急になんで、この地名の話かというと「ここで採れたアザラシのシールが最高!」という話を聞いたからだ。(ちなみに、シールとは、山スキーをするときに後ろに貼って登るにできるためのもの)
私の勤務している職場は、第一の職場をリタイアした中高年を比較的多く雇用しているのだが、従来は自衛隊幹部OBが多かった。特に防衛大出身の士官クラスで元パイロットが一杯、さらに曲芸飛行のブルーインパルスのパイロットなんていう航空ファンなら嬉しくなっちゃうような人もいた。(今はそれ以外の普通の会社のOBの方が多いが)
先日、たまたま私が山スキーをやるという話をしたところ、興味深い話をしてくれた方がいた。その方は、最近うちの職場に来たばかりだったので、元自衛隊とは知らなかったのだが、そうだとは思えないほど巨漢(身長は175センチ以上180センチ以下位で、体重は100キロは軽く越している。110キロ位か?退官2年で20キロも太ってしまったそうだ。)で、運動とは無関係みたいに見えていたので、かなり驚き!! 自衛隊の食事をまともに食べると、一日3600キロカロリーを摂取するようになっているという。さすがに、年配になるとそんなに食べられないので、大分減らして、それでも毎日何キロか昼休みには仕事の一環として自主的に走りこんでいたというから、やっぱり大変なお仕事だと思う。
そんな巨体なOB氏が、実は30キロの荷物を背負って滑ることも堪能で、自衛隊のスキー訓練では4段階に分かれている中では、一番上の師範クラスの資格を持っているという。OB氏は、かつて遠軽に2年間ほど駐留していたので、その当時徹底して訓練を受けたのだという。雪のある地方の駐屯地では、必ずスキー訓練がある。地元遠軽では、天然あざらしのシールを毎年100個ほど駐屯地に奉納するそうだ。たぶんあざらし自体の捕獲が頭数が規制されていると思われるので大変貴重な物だそうだ。
どこが「遠軽シール」は優れているのかとうと、毛並みの長さによるという。通常のシールは、私が使っているのはたぶんモヘアで化学繊維。アザラシのシールと言っても通常は毛並みが1センチ程度。それが、遠軽シールは5センチもある!! という。そうすると、「シールをつけて滑るのがとっても快適」ということになるらしい。シールをつけたり外したりというのは、本当に大変だし、第一寒冷地では一度外したら、なかなかうまく二度目をつけるのは困難だ。そもそも自衛隊は、寒冷地での訓練は敵陣と戦うようなことを想定しているのだから、悠長にシールを付けたり外したりなんて出来ないわけだ。だから、少々の上り下りは全てシールを使って行わなければならない。そういう時に、通常のシールだと、シールをつけたままだと全く滑らないので、自衛隊的でないといことになるわけだ。それが遠軽シールだとうまい具合に滑ることが出来て快適なのだという。
OB氏は、遠軽勤務の後には横須賀方面などで勤務をしていたそうだが、今度は関東などの雪のない所の希望者を毎年募って毎年行われる「苗場キャンプ」に毎年参加。この話が、なかなか興味深い。
苗場プリンスホテルの駐車場の一角に毎年1ヶ月間はテントを常設。何故苗場プリンスかというと、今は逮捕目前の西武の堤氏がオリンピック委員長だったことと、冬の国体やワールドカップスキー大会、オリンピックなどは地元の整備のほかにも、必ず自衛隊がバックアップに入っており、コース整備などの裏方さんを仕事を引き受けていることへのお礼の意味があるという。
中越地震などでもよくマスコミに写ったテントやお風呂は想像以上に快適で、外は零下でも、中はTシャツ一枚で汗をかくほどの高温に保たれているという。そして、まずは苗場キャンプの初日はかの有名な「八甲田山の雪中行軍の教訓のお話」を最初に幹部のOB氏などが訓示を話すという。その後は、彼らにとっても楽しいスキー遊びが1ヶ月も続くので、毎年楽しかったという。でも、4段階に技術的に分けられているとはいうものの、一番下の級でも荷物はもっと軽くて(それでも恐らく10キロぐらい?)、それがだんだんと上の級になると背負う荷物の量が増えてくるわけだし、コースも難しいらしい。大体重たい荷物っていうけど、スキーでなくても30キロは自分は背負えないよ~~。でも、実際は自衛隊は仕事としてスキーをしなければならないのだから、やっぱり結構な荷物を背負って登り、さらに滑りもそこそこにできないとならないのだから、楽しいとは言っても大変なものだ。OB氏は、さらに最高位のレベルの資格を取ろうとしていたらしいけど(普段は師範役なのだけど、さらに上の自衛隊の中でも全国に数人だけいる人)さすがに、それは取れなかったという。でも、毎年通いつめて練習していたなんて、ちょっといい話かな?
ちなみに、普通の私たちのようなゲレンデスキーとしての足前はどの程度ですか?とお聞きすると、まあごく普通の人レベルというから、謙遜して言われているのか、どうなんでしょう? 同じ山を滑ると言っても、その人の目指す目的によって随分方向性は違うものだが、とても興味深い話であった。
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コメント
このお話面白いですね 何かの達人の話って好きです 遠軽知っていました、北海道好きなものですから・・ 私がスキーは知らなくても、MINMINさんの文から分かります
それにしても、人は最初は見た目で判断してしまいますね(^^; 私は、いかにも歩けそうな雰囲気の女性に憧れてしまいます
投稿: えみ丸 | 2005/02/13 14:53
今日、箕輪スキー場そばの空き地で、自衛隊の方々30名ほどがスキー訓練をしているのを見かけました。
皆さんおそろいの白スキー&白ストックだったので、「仕事のための道具なんだな~」と思いました。
当たり前なことですが、仕事でスキーをするのは、遊びでするのと全然違うのでしょうね~。
遠軽シール、大変興味があります。
化繊で似たようなものを作れないでしょうかねーー。いちいち付けたり外したり、ちょっと面倒ですよね(笑)
投稿: 知三朗 | 2005/02/13 20:51
★えみ丸さん
人は結構見かけで判断するけど、20キロ減量したOB氏ならば、体格が立派で、とってもタフそうです。(想像力をたくましくしないとね 笑)
自分は、体が硬いんで、しなやかな女性クライマーに憧れてます(笑)
★知三朗さん
箕輪スキー場で、スキー訓練ですか。。。自衛隊は各地でお仕事としてスキー練習しているんでしょうね。重荷を背負ったり、クロカン的な要素も強かったりと、私らとは全然違うみたいです。だけど、フリーで滑る時もあるようなので、それがとっても楽しいみたいですね。
便利なシールみたいだけど、OB氏も退官してから頼んだら、限定なんで入手できない貴重な物だそうです。代用品??うーん、どうなんだろう。あれば便利そう。
投稿: MINMIN | 2005/02/13 21:18
遠軽シールなんていうのがあるのですね。一般には入手が難しいのは残念ですが、見てみたいです。
かつてテレマークスキーに夢中になっていた頃に、アザラシと化繊をそれぞれ使ったことがありますが、アザラシの方が確かに滑りやすかったです。でも、ダウンヒルが苦手なので、スピードの出ない化繊の方が私には合っていました。
英語のsealは「アザラシ」と「封印」の二つの意味があって、スキーの裏に貼るシールは前者の意味だそうですね。She'll see a seal sealing a ceiling. なんてくだらない英文を考えてみました。
投稿: かめの | 2005/02/16 20:32
かめのさん、私もその毛足のなが~~い遠軽シールの実物を拝見したいものでした。かなり貴重なものみたなので、ちょっと無理そう。。。。
アザラシシールと、化繊とどちらも使われたことがるのですか!!私は化繊のみなので、違いがわからなくて残念。せっかく、当時のテレに夢中になったのに、もったいないなあ・・・。私的には、北八つ界隈ってテレでも山スキーでも広い斜面がないので、滑るとすると蒼くなりそう(苦笑)
それにしても、さらっと英語でジョークとは、座布団5枚~~☆☆☆☆☆
投稿: MINMIN | 2005/02/16 22:55