「四度目のエベレスト」村口徳行著
以前に63歳で世界最高齢の女性登山家の渡辺玉枝さんがエベレストを登った体験などを綴った「63歳のエベレスト」という本に感銘を受けた。(その時の感想は、私のHPの「おしゃべりROOM総集編第40話」に載せてます)
そのときに一緒に登った方が村口カメラマンだった。その彼が本を書いたということはS夫妻からも聞いていて、最近ではREIさんからもなかなか良い本だよという話を伺った。たまたま本屋さんに行ったら、とても綺麗な表紙の文庫本がその本だった。
早速買ってきて読み出した。写真がとっても綺麗なのは当然だが、内容がとっても良い。一気に読んでしまった。4回のうち、2回が仕事で2回がプライベートという。2回目が渡辺さんとの遠征で、3回目が三浦雄一郎さんのものだ。
登頂シーンを期待するとちょっとがっくりなほど、あっさりとして書かれているので、期待しない方が良いと思う。それよりも村口氏が山に向かう姿勢というのが、とても小気味良い。現在エベレストの一般ルートはある種のお金を出せば誰でも登れるに近い実態があるとは聞いていたが、本当にその一端を垣間見る思いがした。その中でも、普通の人がそれなりにちゃんと準備して、きちんとトレーニングして登るという行為に対しては理解ができるようだが、本当にどうしようも無い人まで来ている・・・・というには、ちょっとユーモラスな感じで書いてあって面白い。
それと、この本で出てくる渡辺玉枝さんは、やっぱり凄い人なんだなって痛感した。村口氏は、カメラマン特有の客観的な見方をする人だが、その彼は全体に辛口なんだけど、その彼をしてうーんっていう感じなんで、やっぱりすごい。
この本では、山はただ登ればいいというものではない、どう登るのか、人から作られたものでない自分自身のタクティクスが重要である・・・・という。自分としてはこの本を読んで一番気に入った感想である。それと、もう一つは7000mを無酸素で登れない人はエベレストを登る資格が無い・・・というような考え方の部分だ。これは、とっても真実だなあと思う。有名な著書の「空へ」を読むと、いかにエベレストは極限の世界か・・・・ということがわかるが、少なくとも自らの肉体を7000m位までは無酸素で居られるレベルにしておかないと、たとえ酸素を吸って8000mに登れるといっても、あまりにもリスキーであるということだ。
今年の夏に自分が登ったマッターホルンでは、4400mレベルでかつ短期決戦なので、あまり高所順応というよりも、純粋な筋力とか体力の方ポイントだったと思う。ガイド登山をしたので、色々と思うところがあった。自分としては、体力面では完全に足りなかったと痛感しているが、幸いにも自分のタクティクスが「だめもとで、日数を多くとって狙う」作戦と理解あるガイドのめぐり合ったということで登れたのだと思う。この程度をタクティクスと言ってよいのかどうかは?だが、それでも自分なりに考えた方法なのでした。
この本は、全然エベレストを登ってみたいとは思っていない自分にも(爆笑)、とっても良い本です。特に、76ページ以下に載っているヒラリーステップの大渋滞の写真の様子は必見です。いまや、どこぞの日本のGW並みの渋滞の様子とは、感慨深いものがあります。
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コメント
もう読まれたのですね。
面白いですよね。 ハイカーの私にも面白いのですから、雪山やクライミングをなさるMINMINさんにはもっと面白かったと思います。
彼の登山への姿勢、厳しいですが共感出来るものがあります。
「空へ」を読んで以来、エベレストさえガイド登山で登れる現状に驚きですが、この本の写真を見ると画像として理解出来ますね。
でも彼もガイド登山を否定している訳では無いし、登山への姿勢の問題なのでしょう。
それにしても、山野井さんといい、この作者といい、彼等の体力・能力は常人ではありませんね。
渡邉さんの本、読んだ事が無いので機会があれば読んでみます。(文庫でないと読みにくいので)
投稿: REI | 2005/10/30 16:14
REIさん、「登山への姿勢」ということ、まさにそうだと思います。それがしっかりしている人ならば、ガイド登山自体を否定しているわけではないのですよね。
例えば、三浦雄一郎さんたちのパーティーが細かく食料計画などの数値などを最初にきちんと出したことに対して、大雑把な方が良いと彼は言いつつも、正統派のやり方をちゃんと作ってきたことに対して「好感を持った」とある。三浦さん達も、自分達なりに作ってきたことがやはり「登山への姿勢」として好感を持ったのだろうな・・・って思った。
でも、本当にこういう人達の体力ってすごいなあって私も思いました。
投稿: MINMIN | 2005/10/30 21:09
MINMINさんのこの本に対する感想読みました。
読んでみて、やっぱりあの講演会には、
行って欲しかったと思いましたよ~。
私はこれからこの本読むつもりなので楽しみです。
でもまだ図書館に入ってないんだよな~(爆
エベレストシリーズでは、「63歳の~」も「空へ」も読みました。
「デスゾーン8848m」はご覧になられました?
さらに「死者として残されて」も、
この2冊とセットで読むと面白いですよね。
もしまだご覧になられてなかったら、是非お読みください。
投稿: Aurora | 2005/11/15 14:57
そういわれると、ますます後悔しちゃいます。。。是非是非今度内容をもっと教えてくださいませ。(綺麗な画像見たかったなあ・・・・)
「デスゾーン8848m」も良かったですね。「空へ」だけでは本当に足りなかったので。「死者として残されて」は誰の作品? これも例の遭難事件のことですか?読みたいですね。教えてくださってありがとう☆
投稿: MINMIN | 2005/11/15 21:11
「死者として残されて」は、例のエベレスト大量遭難があったとき、難波康子さんとともに残されたけど、翌日復活してテントに戻ったベック・ウェザーズ氏のです。この本を読むと、彼がなぜ翌朝復活したかがわかります。ほんと彼だからこそ復活できた、というかんじです。
山のことだけでなく、彼のプライベートのことも書いてる本でした。なかなか面白いです。
MINMINさんもなにかおすすめ本があったら教えてくださいね♪
投稿: Aurora | 2005/11/16 01:45
「死者として残されて」は、やはりあの方の話でしたか・・・。そういえば本屋さんで少し手に取ったような覚えがあるような・・・。かなりのダメージを負って生きているという話で、ちょっと辛かったので買わなかった本のような。。。
今度やっぱり図書館で注文してみましょうっと。そういえば、そちらのプログで書かれていたクライマーのための身体関係の本、あれ、よさそうかな? 今度本屋さんで見てみようと思います。
自分は、何よりも体をもう少し柔軟にならないと、駄目だなあってずっと思ってますが、一日にして体は柔らかくならず・・・。悩ましいです。
投稿: MINMIN | 2005/11/16 21:37
『クライマーズボディ』ですか?
あれはフリークライマーに限るので、アルパインなMINMINさんにはどうでしょう・・・? 私もあくまでも参考程度に読みました。
体が固いのにはヨガがいいらしいです。私も股関節だけ柔らかくて、立位体前屈はめっちゃ固くてマイナスです。今度一緒にヨガをやりましょう!
投稿: Aurora | 2005/11/16 22:24
Auroraさん、股関節だけ柔らかいってずる~~い!!
私は股関節が堅すぎて、あぐらさえもかけないので、現在大体毎日少しずつ柔軟?をちょこっとやっているのですが、うーん、全然堅くて参ってます。
ヨガで、一番初歩的に股関節が柔らかくなる方法があれば、すぐに練習したいです!
投稿: MINMIN | 2005/11/17 23:18