「生還~山岳遭難からの救出~」羽根田治著
この本も図書館で借りた本。最初の導入部分の遭難話を含めると8つの話が載っている。いずれも生還劇なので、ある意味で最後に死なないというのは救われる結末なのだけど、そう思いながら読み始めたものの、あまりのリアルな話に、引き込まれるようにしてハラハラドキドキであっという間に2時間かからないぐらいに一気に読んでしまった。
最初の導入部分で出てくるエピソードは全くの山の素人の話なのだけど、それ以外のテーマとなった7つの実話はいずれも一般的な登山者の話だ。ハイキングレベルの人から、かなり長く何十年も登山をやっている人、1名はバリエーションをやっているレベルの人も1名いた。いずれも陥る可能性のある話が一杯で、大変考えさせられる内容だった。
遭難は1つの原因だけで発生しているというよりも、あの時にこうしていればとか、別の選択をしていれば・・・というような仮定の話も含めて、複合的に原因が重なって起こることも示唆している。思いもよらないちょっとした間違いの選択というのもあれば、気をつければ十分すぐにリカバリー可能な道迷いとか。沢に迷いこんで、あるいは強引に下ろうとしての遭難例も3つあった。沢であるがゆえに水を飲んでしのげたのであろうけど、やはり鉄則は尾根筋に戻るべきであったろう。最長で17日間を高カロリーのマヨネーズを持っていたことがかなり効果的に幸いして助かった例も載っていた。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4635178161/ref=pd_sim_dp_2/250-2080326-0138667
7つの実話のうち、6つまでが単独行の話だったこともあり、単独が多い自分には多く思うところがあった。今後の山行に何らかの形で参考にしていきたいと思った。「生還」それは肉体的な要素や外的な要因も多いが、一番大切な所は精神的な部分であろうと思う。思うことは一杯あるが、それは私の胸に深くじっくりと熟成させて身となり肥やしとして教訓としたい。
また、実は一番面白いといっては失礼だが、一番最初のエピソードで全く山を知らない24歳の女性2名の話は驚いた。夏に上高地に遊びに来たついでに、二人で西穂高山荘までピストンで往復して登ってみようとなり、下りで全く別の方角に降りてしまい(新穂高側から登山道があることすらしらなかった!)、二人ばらばらになって、いずれも9日間後、11日間後に生還。昭和43年当時大いに騒がれたが、翌年の5月に二人で遭難場所を再訪した際に、再び遭難。1年以上たって、土砂に埋もれて2名とも発見されたという。5月の西穂高界隈に雪がどんなにあるのかとか、地図さえも持たない・・・そんなまさに知らぬが仏みたいな話で、本当に仏様になってしまった話しは悲喜劇のような感じに思えた。知らないということは、本当に恐ろしいことだと痛感した。
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コメント
この本は全く知りませんでした。 読んでみたくなりました。
タイトルは覚えて無いのですが、奥多摩遭難の本や富山県警の遭難本など、この手の本を読むと、自分も犯しそうな遭難例があり、自戒になります。(この表現変ですね)
一方、有り得ない様な事例もありますが、MINMINさんが取り上げていらっしゃるのは、後者ですね。
人の生命力の強さや若い故の体力には感心しますが、2度目の遭難は故人には申し訳ありませんが、学習能力が無いとしか言い様がありません。 冷たい言い方ですが、こういう人は山に限らず、生き方その物に問題があるのでは無いでしょうか。
単独行に関しては、やはり事故があった時は絶対的に不利だとは思います。 この辺りが私もジレンマです。
でも、自分の力を知っているので、単独の時が逆に一番安全なのも事実です。
ガイド山行で冬の蓼科山で、ガイドの後を皆で付いて歩いて、ルンドヴァンデリングに陥ったのに、ガイドさんが一緒だから怖くなかったという話を聞きましたが、皆で迷えば怖くないってのは理解できません。
投稿: REI | 2005/12/10 15:19
REIさん、レスありがとうございます。
同じ作者の羽根田氏には、「気象遭難」という本もあるのですが、その本は以前やっぱり図書館で借りて読んでいて、同様になかなか良い本です。
今日も図書館に行ったら、もう1冊役に立ちそうな山の遭難事例などの本があったので、手持ちの本を読み終わったら、それも読んでみたいと思ってます。
単独という意味では、かなり考えさせられる内容です。でも、多くの人が、再びやっぱり単独でしばらく後には山にむかっていくのです。もちろん、細心の注意をはらってでしょうけど。
ガイド山行で、そんな話があったのですね。赤信号みんなで渡れば恐くない? ほんとにそうかな?ってやっぱり思うのですが。人数が多ければ助かるなんていうのは、あまりそうは思わないほうが良いと思うけどな。烏合の衆の場合もあるから。理想は信頼のおける仲間との登山でしょうけどね。
投稿: MINMIN | 2005/12/10 21:13
山渓などでも、遭難例はできるだけ読むようにしています。
いつ自分も陥るかもしれないことだから。
中高年になって、体力が突然がたりと落ちることも
あるし、これはどんな分野でもそうかもしれないけれど
経験があるということだけで克服できないことはたくさんあるし。(まして、エキスパートではないから尚更。)
遭難例を読むことで、【怖がり】部分を刺激して
できるだけ長く、安全に登りたいな・・と思います。
この本も読んでみたい。なんだか読みたい本だらけです^^
投稿: ぴとこ | 2005/12/12 09:19
たぶんこの本は、最初に雑誌の「山と渓谷」に掲載されていたんじゃないかな?って思うけど、どうなんだろうか?
多分、何らかの形でみたことあるかもしれませんが、本で1冊通して読むとやはり考えさせられます。
年末で忙しいのに、ついつい本を読み出すと止まらないので困ったものです。(苦笑)
「恐がりの部分」って特に大切だと思います。
今回の内容も、ここで恐いって普通の場合ならば思うはずなのに、ついつい・・・っていうのが多い事例でした。ある意味深長な性格の方が絶対に遭難率は低いと思いますね。突っ込んじゃうタイプの人間とは、自分は一緒に山に行くのは・・・って思うものです。
投稿: MINMIN | 2005/12/12 22:28
この本は読みました。
そして、その後立て続けに遭難本読みました。
羽根田氏の本は確かにいいです。
「気象遭難」「雪崩遭難」も読みましたねぇ。
雪崩・・・は羽田氏じゃないけど
読んでればいつか何か起こった時に
役に立つかと思って(笑)
投稿: えび | 2005/12/16 01:27
えびさんも読んでましたか!!
私は、実は逆に「気象遭難」は1年ぐらい前かな?に図書館で借りて読んでました。その時に羽根田氏の話に引き込まれました。今回の本もまさに<読んでればいつか何か起こった時に
役に立つ>という内容ですね。
「雪崩遭難」の本も、実は同じ図書館の棚にあるので、来年になって落ち着いたら読もうかなあ・・・・。
投稿: MINMIN | 2005/12/17 00:15
私のblogに関連した記事を書かせて頂きました。
TBが上手く行かず、2度TBを付けてしまいました。
にもかかわらず、私のblogにはTBが反映されません。(泣)
投稿: REI | 2005/12/18 18:49
TBありがとうございます。2個もありがとう!
そちらはTBが無いんですね・・・
さっそく感想拝見に伺います。
投稿: MINMIN | 2005/12/18 21:13