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2006/07/15

「世界の山々を目指して~山から見た自然環境~」            田部井淳子さん講演会(その3)

(なるべく その1 ↓ からお読みください)

★カルステンツ・ピラミッド(4884m)の登山の話
オセアニア大陸の最高峰がこの山。ジャワ島のインドネシア領のジャングルの中の山。オーストラリア大陸の最高峰というとコジウスコという2000m台のスキー場の最終リフトから2時間位で到達できる山なので、現在は7大陸という場合はこの山でも良いが、カルステンツの方のどちらかを登れば7大陸峰登頂とみなされている。最近知り合った知人のSさんからも直前にカルステンツのほうに登ってきた話と写真を見ていたので、本当に興味ある話だったが・・・・・


完全な政局不安定な地域で、ゲリラ活動が盛んな地域。国や軍や地方自治体や部族の許可証を取るのが8箇所、軍隊の協力なしには入山すらできないという。降り立った場所は、どろどろのジャングルの中。さらに強烈なのが真っ黒な裸体で男性はペニスケースだけ、女性は腰蓑だけというお姿。ここは何世紀?という場所。


物凄く原始的な生活を送っている民族なのだが、食器さえも使わず、地面を掘ったところが鍋兼食器だという。しかし、彼らの身体能力の素晴らしさ、身体の美しさ、筋肉の黒光りする美しさに惚れ惚れしたという。無駄のない動きはすごいという。やはりその中心は足指のレベルの高さがポイントらしい。離回運動(この字であっているか不明 りかい運動とおっしゃっていた)、すなわち1本1本の足の指が自由自在に動かせることなのだが、これを鍛えることによって、バランス能力がアップしていくという。


田部井さんらしいのは、さっそく5本指ソックスの利用や良い靴を履くことの大切さ、離回運動のためのかんたんなトレーニングの仕方などを伝授。幾つかの著作を読んでいて感じていた、簡単に日常生活の中からトレーニングすることの大切さを今なお実践している姿が感じられた。信号待ちしているときでさえも、<足の親指に力をこめて断つことの大切さ>を力説。


★ビンソン・マシフ (南極最高峰 4897m)の登山の話
田部井さんが登られたのはかなり初期の頃だ。何よりも南極はアプローチするのが大変。ぼろぼろの飛行機で天候待ちをしながら、チリの最南端で待機。現在は以前よりも飛行機もマシはなってきたようで、ツアーもコンスタントに存在している。当時は、大枚はたいて行って260万円プラス南極対応の装備で約100万かかったそうで、約350万円。


このお金の話をした時のリアクションがとても面白かった。というのは、大枚はたいて行って・・・・とすっ~ごく大変そうに言うので恐ろしい金額かと思ったら、ダイレクトの費用は260万円、現在のツアーでの値段(大体350万前後かな?)を知っている人にとってはむしろ安いな・・・と思う。また自分と一緒に講演会に参加した友人はハイキングしかしない人なのだが、彼女も500万とかのお金か?と思ったら案外安いと思ったという。


本物の?登山家は山では貧乏が当たり前という感覚だとすると、山でお金を使うのは登山客という定義になるのかもしれないけど(苦笑)、でも南極というのは、普通の冬山がこなせれば特別な技術を使わなくても登れる山なので、そういう意味ではお金と寒さとの戦いが勝負だ。


話の中で南極というのは、とにかく物凄く美しいところだという説明を何度も聞かされた。だから、絶対にこの美しい自然を汚してはならない、し尿も全て持ち帰りというのが自然に心のなかから納得される内容だった。九大への勉学はこのあたりから起因しているようだ。(また、極寒の地では一瞬にして汚物も凍る世界だそうで、汚いとか臭うという世界ではないそうだ)

<人間は自然の中で生かされている> そんなことが自然に感じられるという場所だったそうだ。


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今回の講演にあたり、田部井さんの本からの印象など色々と想像してた。直近で読んだ「女たちの山」、
は第三者が田部井さんおよびシシャパンマのメンバーの登頂への葛藤の話を描いた本なのだが、相当に強烈な本だったし、強い田部井さんという印象がすごかった。


実際にお会いして講演を聴いた田部井さんは、やはり<すごく自然体だけどものすごく強い人>という印象だった。一人の人間としてのオーラがものすごくある!!! 社会的地位がその人を作るという部分もあるだろうけど、努力も大変よくしているし、登山家としてはやはり高所に強い人なのだろうなと思った。大変に頭の良い人で、仕事もいかにもできるし、本当にすごい人だと思った。


容姿などはテレビなどで拝見しているそのままだけど、色白でたぶん言われなければ50代半ばぐらい?の感じがする若々しいお姿と大きな声の方だった。それに何よりも講演がこなれている。もちろん回数を多くこなしているだろうけど、聴き手の興味をどんどん引き出して飽きさせない内容だった。別に山に登らなくても、自然環境に興味がなくても、誰が聞いてもためになって面白い話だった。


以上、大体時系列的にまとめた講演の内容でした。
自分なりの感想なども混じってますが、概ねしゃべった順番どおりで、多少のアレンジがある程度です。


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登山」カテゴリの記事

コメント

MINMINさん、こんちゃあ♪
3部構成の大作ですね。なかなか読み応えがあります。
田部井さんはあちこちで講演されてますよね。私の地域にも
来られて、荒島岳記念登山をされたようです。無名塾の有名な
おっちゃんはいろいろ評価が分かれますが、田部井さんは
人柄でしょうか、評判が良いですね。

昨日はMTB山岳サイクリング(国見山から越前海岸)でした。
蒸し暑さでばてました。今日は凄い雨です。昨夜、急な用件が
発生し、今日の午前中は職場で過ごしました(>_<)

投稿: YAMADA | 2006/07/16 13:41

どうも長文を読んでいただき、ありがとうございます。
田部井さんは、無名山塾の某氏などと違って、地球規模での活躍や視線をもった登山家です。人間的にやはりすごい1桁違う人物といったところでしょうか・・・・

MTBを本格的に使用されているのですね、いいなあ~。私のMTBは故障中だし、自然の中に行くには相当な努力が必要です。
今日は東京は雨がほとんど降らなかったですが、昨日はすごい雨でした。場所が違うと気候も違うので面白いですね。
本日はお仕事もされたようでお疲れ様でした。

投稿: MINMIN | 2006/07/16 22:36

読ませてもらいました~田部井さんが強い女性という評価に納得。私もたしか白神山地の自然のことで田部井さんの講演を聴いたことがあり、MINMINさんの読んだ女達の山も読みました。見た目は普通のおばさんのようなのに、凄いパワーを秘めた人ですよね。

投稿: mogu | 2006/07/17 09:31

moguさんも白神山地のことで講演を聞かれたのですね!
「女たちの山」を読んでいらっしゃるとは、なかなか通ですね。
普通の見た目ですごいパワーとはまさにそうですね。
絶世の美女でないぶん、歳とともに味わい深くなるような・・・・

少しは見習いたいものです。

投稿: MINMIN | 2006/07/17 23:14

>絶世の美女でないぶん、歳とともに味わい深くなるような・・・・
うふふ、言いえてます。 行動の方は無理なので、外見だけも見習いたいものかも。

それにしても、良く覚えていらっしゃいますね。 メモを取るのですか?

温暖化による氷河の消滅は急速に進んでいる様ですね。
キリマンジャロの山頂氷河も殆ど残ってないとか。
地球規模でみれば気候の変動はいかんともしがたいですが(近いところでは、縄文前期は今以上に温暖だった)、7大陸最高峰とか100名山とかオーバーユースの問題は、個人でも何とかできるかな。
とは言っても実際は開発された交通網を利用し、整備された登山道を歩くしか出来ないし、自然の荒廃を招いている「登山客」の一人な訳で、せいぜいゴミ拾いしながら登るくらいしか出来ないなあ。 


投稿: REI | 2006/07/18 21:34

>絶世の美女でないぶん、歳とともに味わい深くなるような・・・・

これに私も反応・・・見習いたいなあ。

足の指の話。。おもしろいですね。なんだかすごく納得。
五本指ソックス、一応もっているけれど、指を一本ずつ入れるのが面倒で。。。(ずぼら)
田部井さんは、掃除機をかけるときにも足におもりをつけたりすると聞いたことがあります。自然体なのに、日々の努力が重なっていて、自然体なのに存在感があるという感じですよね。

苦しいときには息を吐く。。山での食事は少量。というのは、低山であっても、ふだん実感していることなので、今回このお話を聞いてさらに納得しました。

し尿の持ち帰りの問題も、利尻岳で自分の持ち帰り分をザックに入れることに少々抵抗を感じてしまったわたし。。。まだまだです・・反省。

それにしても、ほんと、よくまとまってますね。大変だったでしょうね。講演を聴いたような気分で、うれしかったです。ありがとう。

感想が長くなってしまった^^

投稿: ぴとこ | 2006/07/18 22:44

★REIさん
講演会は今回はメモを取りました。
自分のためにも、ちゃんと整理して書くにはさすがにメモないとかけないので。
一人ひとりがごみを出さない、拾うという行為だけでも、確実に改善していくと思います。富士山のごみは随分減ったようです。
せめて、個人でできることぐらいはやらないとね・・・・と自分も講演会に参加して思ったものです。

★ぴとこさん
五本指ソックスの話にせよ、田部井さんの良いところは、身近な所から簡単にトレーニングに持ち込んで、あまり苦にしないで自然に生活の中でやっていくことみたいですね。本でもそう感じたけど、実際もそんな感じでした。

>講演を聴いたような気分で、うれしかったです。

どういたしました。せっかくなので、講演会に参加されていない方にも情報としてお伝えしたいと思いました。

投稿: MINMIN | 2006/07/20 00:41

MINMINさん、こんにちは。

>講演会に参加されていない方にも情報としてお伝えしたいと思いました。
ありがとうございます!とても詳細でためになりました。

高山病は私の場合高度に弱く3500~3700mくらいから感じ始めます。
そのため山に入る前からアーモンド(ビタミンE)や水を摂取するようにしてます。
バランス感覚を鍛えると深層筋肉(表面筋肉でない体の奥底の筋肉)が鍛えられ、この筋肉が酸素の摂取量を大幅にアップし、高度でも効率的に酸素が取り込めるそうです。
日常のちょっとした事で高山登山が楽しめるなら、普段から心がけたいものですね。

投稿: ゆき | 2006/07/20 16:48

ゆきさん
3500~3700mなら、誰でもそれ位には多かれ少なかれでるんじゃないでしょうか?(笑)
水はわかるけど、アーモンドは初耳! (水は飲みたいけど、飲みすぎるとトイレに行くので困ったもんだ・・・・)
深層筋肉の話、とても興味深いですね。マッスル筋肉?とかいうのではないかしら?
日常生活から筋肉や体全体を少しずつても鍛えておけば、大きな貯金になりますね。

ゆきさんの話もとってもためになりますね!

投稿: MINMIN | 2006/07/20 23:04

ゆきさん、今晩は。
そうです、3,500位からなら普通ですよ。 きっと。
私なんか2,700m前後からダメです。 これは統計的にもある様です。 トレーニングで血液中の酸素量を増やせないか試みてるんですが、全く関係無い様です。 (何の根拠も無いので)
ビタミンBが血量を増やせると聞いた事があるのですが、Eも有益ですか。 インナーマッスルは鍛えるのが難しい。 どうやってますか?

投稿: REI | 2006/07/21 19:38

REIさん、トレーニングで酸素量が増やせたらいいですよね・・・・
Bや、E・・・・やっぱ、バランスのとれた食生活が大切かなあ。

2700mぐらいですか。そうなると八ヶ岳も上のほうだとかかってしまうのですね。それは、改善できるといいですね。

投稿: MINMIN | 2006/07/21 23:18

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