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2006/07/15

「世界の山々を目指して~山から見た自然環境~」            田部井淳子さん講演会(その1)

田部井淳子さんは言わずと知れた女性で世界最初に最高峰のエベレストに登頂された登山家だ。67歳の現在も世界の山々を登られている。数年前に九州大学大学院に学び、自然環境、特に山のごみ問題などをテーマにした研究や啓蒙活動を行っている。


たまたま自分の勤め先の会社は自然環境に力を入れているので、今回は田部井淳子さんを講師に招いて2時間ほどの講演を開催した。定員300名で多すぎると抽選というのでドキドキしたけど、幸いに参加することができた。


テーマが自然環境なので、ごみの話や環境の話ばかりだとつまんないなあ・・・、どの程度山の話が出てくるのか山屋な自分としては心配していたら、本当にちょうど良い程度に環境関係の話がちらほらとさり気なく出てくる程度で、いわゆる頭でっかちな自然保護を声高に唱えているのでないところが大いに気に入った。なんとなく自然保護団体なんていうと、そういう感じのイメージが先行しがちだが、自然にできるところからスタートしましょう・・・・という趣旨の話だった。


講演の中では色々な話が出てくるが、主に七大陸世界最高峰登頂(これも女性では世界初。日本で最初の達成者。)の山々の話にからめているので、当日の話の順番どおりにおおよその概要を書いていきたいと思う。


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(写真はクリックすると拡大)

★エベレスト登頂とマナスル登山
エベレストの登頂から約30年経過した現在、驚くほど氷河が後退している現状に驚いているという。エベレスト遠征当時のネパール側のBCは氷河の上だったが、現在のBCは岩がゴツゴツと出ている全く違うような場所に変貌したという。氷河の後退は明らかな地球温暖化のためだという。当時と現在の2枚の写真を見るとあまりに明瞭。


また、田部井さんの直近の遠征は日本人が8000m峰を世界で初登頂した記念すべきマナスルだ。今年は登頂記念50周年で、入山許可料が無料だというので出かけたそうだが(7000m地点にて敗退)、そこもかつての初登頂の時は3800mがBCだったのが、氷河の後退により4600mにBCを張るようになったという。また、雪が大量に降るようになったのも、温暖化の気候変化のためだという。


山の話としては、今年はマナスルは無料だったせいもあり、野口健のごみプロジェクトをはじめとして、多くのパーティーが入山していた。かつての登山家が登る世界から、登山客ばかりが登る世界に変貌したという表現を使っていた。一般的にかつてはどこの山も1シーズン1パーティー制を取っており、BCは自分達だけのパーティーという感じだったのが、今はBCだけで400名とかの大テント村が出現しており、お金を払ってシェルパの作ったクレバスルートやらはしごを使わせていただく・・・・ 登山客の中には、かつてでは考えられないレベルの人までも来ている・・・・・という内容だった。


このあたりの内容については、最近読んだ本や出会った人の話などからも、自分的には色々と考えることもあるが、そのあたりについては、後日別の機会にでも書こうと思う。


とにかく人が登ると当然ごみがでるのだが、エベレストの山頂にも残置ボンベがあったり、アタックキャンプや道々には捨てられた酸素ボンベなどが大量に放置されている写真も写っていた。やはりこれだけ大量な話になると、し尿も含めて対策をしないとならないというのが納得した次第でした。


★富士山登山の話
田部井さんは世界の山を歩いているが、日本という国は今でも外人からみると「フジサン」というイメージが強いという。首相の名前を知っている人はほとんどいなくても、フジサンはほとんどの人が反応するという。その素晴らしき富士山は夏の間だけウン十万人もの大量の人が登る特異な山であるが、やはりこれだけになるとオーバーユースで、トイレ問題やごみ問題は深刻。


この素晴らしい山をかつてはし尿の垂れ流しを山小屋がやっていたが、最近は相当な費用をかけて対策を講じて改善されてきたという。ごみについては、ごみ持ち帰り運動のおかげで、相当減ってきており、登山道に落ちているごみは激減。人々の意識が向上したお陰だろう。あとは、やっぱり携帯トイレの普及などを検討しているという。


(その2につづく)

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