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2006/10/01

「凍」 沢木耕太郎著

随分前の6月にネット仲間のきむひろさんにお借りしていた「凍」をようやく読み終えた。「神田反省会」と銘打った?山スキー関係のオフ会の時に渡してくれたのだが、次にお会いするのは次の山スキーシーズンかな?なんて思っていたら、ついつい安心して読まないでいた。

やっと秋の夜長?で読書にふさわしい気候にもなったので夜に読み始めたところ、一気読み。3時間かかったかどうか?ぐらいであっという間に夢中になって読んだ。

山に興味を持つ人では有名な山野井泰史氏のギャチュンカンの登頂とその後の壮絶な生還への実話を沢木氏が再現するかのように詳細に描いたものだ。

以前、このプログでもTBSテレビの「情熱大陸」に出演したのを見た感想などを取り上げたし、山野井氏の自著の「垂直の記憶」も感動の1冊だった。丸山直樹氏が山野井氏を描いた「ソロ」の感想などもプログに掲載済み。

内容はギャチュンカンの遠征の話を丁寧に心理描写も含めて描いており、この小説?だけを読んでもわかるように山をやらない人にもうまくわかるように書かれているので、さすがにプロの手になるものだなと思った。沢木耕太郎氏は、「深夜特急」という本が有名でスポーツ関係の本なども書いている知識はあっても、実は読んだことがなかった。以前読んだ丸山直樹氏はちょっと自分的にはある種の癖があると感じてよんだが、今回は本当にすんなりと読み込めた。

なんだか読んでいると、以前みた「運命を分けたザイル」という映画のシーンそっくり! (原作は「死のクレバス」といって、プログにも取り上げ済み。この本の中でも山野井氏と妙子夫人が「自分達は死のクレバス以上みたいだね・・・」みたいなせりふが出てきたような。読んでいてどういう場面か想像するんだけど、自分はそんな冬壁など登ったこともないので、頭のなかは映画「運命を分けたザイル」が映像的に流れていて、そこに山野井夫妻の奮闘する姿をダブらせて読んでおりました。

山野井氏の「垂直の記憶」ではこのギャチュカンの話は割とさらっとしていて、具体的にイメージできない部分が多々あったけど、この「凍」を読むと本当に凄いの一言でした。特に印象的なのは妙子夫人のこと。もともと凄い人だとは思っていたけど、本当に山野井氏以上にある意味凄いと思ったのでした。精神力の強さ。胃潰瘍になりながらも必死で泣き言もいわずに行動する力。全く高所では食事を取れなくて水さえも飲めない状態にもかかわらずに必死で行動する力。テレビでも拝見したが、ほとんど現在は指がない状態なのにすごく自然体に生きている姿。(もともと女性の方が痛みには強くできているとはいうものの、忍耐力のたまものですね) 彼女は世界的にも女性で第一線のアルパインクライマーと思っていたけど、本当に登攀能力もすごいのだと痛感した。並外れた体力があり、バランス感覚も優れていて、とくかくこの奥様がいてこその山野井泰史さんなのかな? と思ったものでした。

あまりに一気にこの本を読んだので、もう一度今度は「垂直の記憶」のギャチュンカンの章だけを読んだけど、やっぱり壮絶な生への帰還劇と思いました。凍傷の手術を手がけた日本で最も凍傷手術に強いと言われている白髭橋病院の某先生曰く「自分が手術した人間で生きているのはあたただけですよ」というせりふがあるのだけど、本当にこれからも生き続けて自分の山を登り続けていって欲しいものです。

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コメント

私も【垂直の記憶】を先に読んで、【凍】を後に読みました。どちらも一気に読みまして、MINMINさんと同じような感想を持ちました。【凍】を読んで、益々妙子夫人のファンになりました♪

山行形態もレベルも桁違いに違いすぎますが、【夫婦のありよう?】としては、ちょっとだけ通ずるものがあるかな~なんて
思ったりしながら読みました(^^)【死のクレパス】は、これから読んでみたいと思っています。

投稿: ハイジ | 2006/10/02 00:11

ハイジさん
やっぱりどちらも一気読みですよね!!
妙子夫人、ホントすごいですよね。同じ女性ながら、とても同性とは思えなかったりして。
いや、女性ならではの肝の据わった部分、お母さんならば肝っ玉母さんみたいな感じかな?

運命を分けたザイルはごらんになりましたか?(もうビデオも販売されているけど)この原作も素晴らしいですよ。是非ご覧くださいませ。

投稿: MINMIN | 2006/10/02 23:03

こんばんは!
3連休は天気に翻弄されて、結局あまり歩かずに温泉ハイクになってしまいました。各地で遭難があったようなので、秋山は気をつけなければですね。

で、遅ればせながら、山野井さん&沢木さん、はどちらも昔からファンなので思わず食いついてしまいました。
私も「ソロ」、「垂直の記憶」、「凍」の順に読みました。
「垂直の記憶」は淡々と書いている所が好きなんだけど、「こんなじゃ、山を知らない人に山野井さんのすごさがわかんないよー」と思ったりして。(よく考えたら、山を知らない人が読む訳ないか?)
で、「凍」は、素人でも分かりやすい表現で、でも大げさすぎず安心して読めました。

山野井夫婦の精神力は本当にすごい。
MINMINさんは妙子夫人のすごさが印象に残ったというけれど、私はやっぱり目が見えない中で下降する山野井さんのすごさが印象的。
でもって、「妙子が一緒だと、彼女を気にしすぎて山に集中できなくて事故に遭うことが多い」と書いているのがまた
「愛」、って感じで好きなのでした。人によって感じ方も違うのですね(当たり前だけど)
高所登山の話はメンバー間の確執とかの話が多いので、この夫婦のチャレンジはすごく純粋で、読んでよかったなぁと思えますね。

#MINMINさんのブログは、目の付け所が趣味に合ってとても楽しみです。(リアクションは遅いですが)

投稿: Hirarin | 2006/10/09 21:24

Hirarinさん
どうも、感想ありがとうございます。

>こんなじゃ、山を知らない人に山野井さんのすごさがわかんないよー」と思ったりして

ほんと、私もずっとそう思ってました。それに、もっと細かい描写を知りたかった。
昨日本屋さんで「山と渓谷」の沢木さんの記事を読んでいたら、やっぱり「死のクレバス」(映画になったものの原作)を沢木さんが読んで、それで「凍」を書こうと思った・・というくだりがあって、なんだか納得しました。

>「妙子が一緒だと、彼女を気にしすぎて山に集中できなくて事故に遭うことが多い」と書いているのがまた「愛」、って感じで好きなのでした

そうそう!! 私もこの辺りは読むと、じーんとしてしまいました。奥様を年下のご主人らしく甘えているようで、頼っているようで、だけど守っているみたいなご夫婦ならではの絶妙な感じがしました。

リアクションが遅くても、全然かまいませんので、昔に書いたネタへのレスでも大いに結構です。今後ともよろしくです。

投稿: MINMIN | 2006/10/10 20:45

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