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2007/05/12

槍のもう一つのエピソード

前回取り上げた<無謀を絵に書いた図・・・>の話には、実は関連したもう一つのエピソードがある。

それは・・・

前夜からの話にさかのぼる。

私の泊まった部屋は槍の穂先が良く見える部屋で、夕方までは私の部屋は女性単独で自炊の方が1名、愛知から来ていたご夫妻が1組、そして私の4名だった。夕食を終えると1組の恐らく20代前半位と思われる若いカップルが到着していた。

そのカップルは上高地から一気に登って来たようだった。それで男性の方が「明日、ご来光を見るために穂先に登るつもりです。」と言うので、<ちょっと待ったあ!!!>ってな話になったわけです。普通の時間に登るならばその人の腕次第ですが、ヘッデンつけて登るみたいな話なのです。

私が

「あのザイル操作をするようなアルパインクライミングとか雪山とかたくさん経験したことある人ならば問題ないと思うけど、そういう経験あるの?」

「??・・・・」

「上の方が雪の壁になっていて、相当に厳しいと思いますよ。ダブルアックスがあったほうがよいぐらいよ。」

「登ってみて、降りれるかどうか・・・・自分はその判断ができると思います。」とムキになって言うのでした。ちょっと、私の言葉は強かったかもしれないけど

「夏山の穂先に登るのとは今年は全然違うのよ。ルートが暗くて見えにくいと思うし、バリバリに凍っている可能性があるの。少し雪も緩んで明るくなってから登ったらどうなの?前後の人の動きとか見ながら登った方がいいんじゃない?」

すると、ご主人だけが穂先に登られていた奥様の方が「そうよ、とっても今年の穂先は難しいから、小屋の人に相談してみたら・・・・」

と少しとりなすような感じに中に割って入ったが、彼女も真剣に若いカップルを止める形だった。少なくても朝一に登るのは・・・・・。

カップルは自分が見る限り山の装備を使いこなしている風でなく、結構新しい装備ばかりって感じだし、20代でバリバリに登れる連中ならば、GWのこの時期に女連れで小屋泊まりなんかしません・・・・と自分は思うのですが。(自分も20代の時にはテントばっかりだったしね。) 雪山自体が初めてかどうかは?ですが、まあ多少はやっていても、多少のレベルでは、今年の場合は簡単には登らせてくれないのも事実です。

ちょっときまづい空気が流れたものの、ちょうど消灯となりました。

************************

そして、翌日の早朝の話につながるのでした。実は、あの前述の無謀カップルが同室の彼らかどうかを実はとっても心配して穂先を眺めていた自分でした。例の奥様も一緒に観察しました。よくよく眺めていると微妙にウエアの色が違うようです。奥様が「そういえば、もう一組が朝登るって言っていたわ。ピッケルも持っていないとかいう噂の。その人達みたい・・・・。」ということになるのです。

さすがに同室に泊まったカップルに万一があると、自分としては夢見が悪いです。あれだけ説得したので。(おせっかいなウルサイおばさんって思われているだろうなあ・・・・)

さて、自分の山スキーの場合は雪が緩むのを小屋で待つ必要があるので、まったりモードで待機している訳です。7時ごろだったか?なんとまだ彼らは穂先に登ってませんでした(ふぅ~) 自分も多少言いすぎたかな?と思っていたし、そろそろ朝よりも雪が多少は緩む感じで、他の人もぼちぼち登り始めたので、言ってみました。

「あれ、行かれてなかったのですか?」

「どうしようかと思って・・・」(彼女は恐くて登りたくなさそうな感じでした。彼はとても登りたそうだけど、悩んでました。)

それで、心理作戦です。若者には特に<駄目だ>というと強引にでも反抗して無理にでも登りたくなる気持ちになるでしょうから、自分は逆に

「行ける所まで行ってみたら?せっかく、ここまで来たんだものね。危ないと思えばそこまでにすればいいじゃない?」

と言ってみました。自分が登った前日と違って風も穏やかです。(このカップルは普通のアイゼン、ピッケルはもちろん持っている人達です。)

その後、私は槍沢をKさんとOさんと一緒に滑って登り返して上がってきました。再び休憩して、ぼちぼち飛騨沢の滑走の準備でもしようかな?って頃だったでしょうか?槍を見上げていると、彼女の方が近づいてきて、

「アドバイスありがとうございました。やっぱり自分は無理でしたけど、やはり途中で一人で降りることさえもできなくなり、恥ずかしいです。上から降りてきた人達と一緒になり色々と指示を受けながら降りてきました。」

「どのあたりまで行ったの?」

「最初のはしごにも達しない下の方でした。」

「彼のほうは?」

「まだ戻ってこないけど、山頂を目指して登って行きました・・・。」

しばらくすると、彼のほうがちょうど戻ってきました。すぐに私のことに気づいて

「本当にマジ恐かったです! 色々言っていただいてありがとうございました!!!自分は新入社員で本当にストレスたまっていたけど、随分スッキリしました。これで目的も達成できたし、とっても嬉しいです。研修中なので怪我でもしたらまずかったですが。」

「あー、やっぱりお若いのね。23歳?」

「院卒なんで・・・・」

まあ25歳位ですね・・・・。息子ぐらいの年とまでは言いませんが、うちの会社の新入社員の教育係をやっているみたいな気分になっちゃいました。(苦笑)

さすがに彼らは日の出シーンを見るために全員注目する風景の中で例の無謀カップルのように穂先に登る気持ちにはならなかったようでした。(もしかしたら、暗くなって槍の肩に到着していたので、昨日の夜の時点ではあまり雪が多いことに気づいていなかったのかもしれません。)

まあ、自分としては穂先には明るくなってから登ると、当然ルートもわかりやすいし、他の人の登るのを多少参考にできるんじゃないかな?って意味でお勧めした訳です。私はその若者がどの程度登れるかなんて、正直全然わからないのですが、少なくとも<彼女の方が途中で登れなくなる可能性は極めて高い>と予想していたのです。そうなると<ひとりで降りれないんじゃないかな?それには他の人が他力本願ながら居たらいいな>って思っていたわけです。

男性はたとえ雪山にあまり経験がなくても、えいやぁ!って頑張ってしまう力というのか、勇気というのか、高度感なんかに強い人が多いので、山頂まで登れる可能性は高いと思ってました。でも、女性で初心者だとかなりきついと思ったものです。男性も彼女の面倒をみて登るまでの余力はないだろうし。本来的にはパーティーなので、登れない人の面倒をみるのは当然この場合男性なんですが・・・。まあ、恋人同士の関係については私もコメントは差し控えたいと思います。

ともあれ、多少差し出がましい自分でありましたが、お二人に感謝されて、ホッとしたのと同時に、自分自身も技術の向上は必須、レベルアップ向上を誓ったのでした。

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コメント

こんばんは。
槍って不思議なところですね。
厳しい山に入っていて、そんな無謀な方々が散見されるなんて、他ではあまりないように思うのですが(なぁんて厳しいところになんて全然行ってませんが)。
それとも自分が見えてないだけで、他エリアでもそういう人たちが案外たくさんいるのかもしれませんね・・・

投稿: あや | 2007/05/12 02:54

あとで反省してお礼まで言ってくるなんて素直な人たちでよかったですね。

私も去年はじめての初槍でしたが、バリをそれなりにこなしていてもけっこういやでしたよ。
(登ったら自分的にはたいしたことなかったけど)
最近の若いもんはすごいですねー

> 「あー、やっぱりお若いのね。23歳?」

み、MINMINさん、そのせりふ、ちょっとオバサン入ってるかも…(笑

投稿: オーロラ | 2007/05/12 07:52

> あとで反省してお礼まで言ってくるなんて素直な人たちでよかったですね。

確かに。
それにしてもオーロラさんがいやだっておっしゃる位だし、槍ってやはり大変そうですね。槍ですものね。
今年普通に行こうとしていたので、例にあがった若者たちと自分って大差ないなー、と実はちょっと冷や汗です。

投稿: あや | 2007/05/12 09:46

★あやさん
槍の穂先は雪の付き方によって大分難易度が違ってくるので、例年のGWだと、そんなには難しいってほどではないと思われますが。(もちろん夏山で既に難しく感じてしまう人は論外です。夏山で楽勝で登れるのが最低条件かな?夏山で穂先に登ったことのない人の場合は、はしごクサリ一杯ルートが得意かどうかがメルクマールかな?)

槍は、肩まではお天気がよければ難易度が高くなくて体力だけで登ってこれることに、このようなドラマが生まれる要因があると思います。

投稿: MINMIN | 2007/05/12 11:22

★オーロラさん
そうそう、<素直な人達>であったから、心救われる気分で、ついついブログに書いてしまいました。たぶん男性の方は雪のない季節に登っていて、楽勝だったんじゃないかな?その延長で考えていたので・・・

バリをやっていると、高度感にも慣れているでしょうし、アイゼン、ピッケルの使い方などなど、やはり全体のこなしが全然違うでしょうね(もちろん、オーロラさんみたいにきっちりと基本がしっかりしている人の場合。単に連れて行ってもらっている人だとどうかな?)

本当に今回は老婆心丸出しのオバサン入っちゃいました(苦笑)情けは人のためならず・・・。

投稿: MINMIN | 2007/05/12 11:29

落ちなくて良かったと思える結末でした。
GWはあちこちで落ちてましたもんね。
例年より雪が多かった為でしょうが、秋と春は???という事故も多いですね。


>はしごクサリ一杯ルートが得意かどうかがメルクマールかな?)
苦手でしゅー。 これが私には一番問題でしゅ。
 (老婆心で失敗多のおばさんが、赤ちゃんプレーしてみました)

投稿: REI | 2007/05/12 21:40

槍のもうひとつのエピソード、よい話だ・・と頷きつつ読んでました・・
未経験の雪のついた槍のことコメントできなくて、読むの専門だったけど、MINMINさんの夜のアドバイス、朝のアドバイス・・両方とも、うんうんと思って読みました。

山の経験、社会人としての経験あっての言葉ですね・・・先輩としての助言って、何の場面でもなかなかタイミングが難しいけれど、まっすぐな気持ちがあれば、通じるものだな・・と感じました。

若さはゆえの無謀な冒険心も大切なときがあるけれど、私の息子や娘も・・親以外の大人のアドバイスに素直に耳を傾けるようであってほしいものです。(ちなみに24・23・20)

そして・・自分もブリッコばっかりしないようにしよう・・うむ。ほんとに。

投稿: ぴとこ | 2007/05/13 12:12

こんにちは。
MINMINさんのアドバイス、きちんと届いてよかったです。
読んでいてかなり緊張しました・・・
とっても感謝された様子も伝わりますね。無事でなによりです。

ところで、槍沢ですか。相当気持ちよかったんでしょうね~
よだれをたらしながら眺めていました。
HPの詳細レポも今から楽しみです!

投稿: tomomi | 2007/05/13 20:20

★REIさん
わたしも、人に何か言えるほどのレベルじゃないけど、多少の年の功っていうのか、ついつい言いたくなっちゃいました。

MINは梯子は恐くなかったでしゅう~。クサリも出ているのは一杯使いましたでちゅ。REIさんは苦手ちゃんなんでしゅかぁ~。雪が無かったら楽しいでちゅよん。(←赤ちゃん言葉は難しいちゅね。)

投稿: MINMIN | 2007/05/13 21:08

★ぴとこさん
新入社員の親御さんらしい感想ですね。新人さんとのコミュニケーションって難しいです。去年私が担当した女性社員はとっても素直な子で育てやすかったです。男性の方は上司が教育しているけど、難しくて皆で頭抱えてます。。変な自信過剰っていうのか・・・。どっかのレスに書いたけど<根拠のない自信>って奴が困るものです。

一晩経って、冷静になったお二人はそれなりに行動されたので良かったです。自分もほっとしました。前述した無謀カップルとはやっぱり全然違う素直な人達でした。

投稿: MINMIN | 2007/05/13 21:13

★tomomiさん
ちょっと、どきどきしますよね。前述の無謀カップルの項とも比較して読むと同時並行のドラマなので、なおさらです。

槍沢は登り返しが大変なので上部の急斜面だけを2本。飛騨沢はいい景色で嬉しいです! 私もtomomiさんのブログをちょくちょく眺めているんだけど、GWの報告を楽しみにしてます。

投稿: MINMIN | 2007/05/13 21:17

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